注目研究

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 国立高専の注目研究を、ライフサイエンス、環境・エネルギー、製造技術、材料・装置デバイス、機械、建築・土木、情報・通信、計測・分析、自然・科学、人文・社会の10の分野に分けて紹介します。

 

研究ネットワークについて日本全国に設置された51の国立高専に所属する研究者がネットワークを形成して、さまざまな分野で新産業につながる研究開発を行っています。全国各地で研究している研究者が連携することで、難解な技術問題に対して複合融合的なアプローチを行い、答えを見いだします。

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事例紹介

研究分野
材料・装置・デバイス
分類

タイトル
摩擦攪拌現象を利用した繊維強化熱可塑性樹脂の接合
氏名
倉部 洋平
学校名
石川工業高等専門学校
所属学科等
機械工学科
職名
助教
プロフィール写真
概要
これまでに検討されている繊維強化熱可塑性樹脂の直接接合として振動接合などが挙げられるが、接合時に発生する材料流動により繊維の再配向が継手強度低下の要因となっている。本研究では、摩擦攪拌により発生する特有の材料流動により繊維配向を制御し、接合が可能であるか検討を行った。
本文
摩擦攪拌接合したガラス繊維強化熱可塑性樹脂の繊維配向
 摩擦攪拌接合はFig.1に示すように、回転する接合ツールを材料に圧入し、接合線に沿って移動させることで発生する摩擦熱および攪拌力により接合を行う。ガラス繊維が30wt%含有した繊維強化熱可塑性樹脂を摩擦攪拌により接合した継手の接合部断面をFig2に示す。材料表面近傍では欠陥が発生しているものの、接合が可能である。継手の引張試験の結果をFig3に示す。白抜きは接合前の母材の引張試験の結果である。継手強度は約25MPa程度であり、継手効率は約37%であった。Fig4(a)および(b)に母材および継手の接合部の繊維配向率を示す。同図では、y方向が引張荷重の負荷方向を示している。母材と比較すると摩擦攪拌接合により接合したガラス繊維強化熱可塑性樹脂のy方向の繊維配向率が著しく増加している。すなわち、摩擦攪拌接合は従来の接合方法と比較して、有効な接合法である可能性を十分有している。

 Fig.1 Fig.2
     Fig.1 摩擦攪拌接合           Fig.2 接合部断面

    Fig.3 
     Fig.3 継手の引張試験結果     
    Fig.4
       Fig.4 接合部の繊維配向率


今後の展開
 ガラス強化熱可塑性樹脂の摩擦攪拌接合は、繊維配向を制御することが可能であり、有効な接合法としての可能性を見出したが、接合部内部に欠陥を認められており、継手強度の低下の要因となっている。この欠陥の発生を抑制することで更なる継手強度の向上を達成することを今後の目的としている。また、これまでに、鉄鋼材料と熱可塑性樹脂の摩擦攪拌現象を利用した異材接合に関する研究も行っており、これらから得た知見を基に、鉄鋼材料などの金属材料と繊維強化熱可塑性樹脂の異材接合へ応用する予定である。


その他特記事項

電話
076-288-8098
E-Mail
ykurabe*ishikawa-nct.ac.jp
ホームページ
http://www.m.ishikawa-nct.ac.jp/laboratory/kurabe/
掲載年度
2015年度