産学官連携成果

産学官連携成果

 産学官連携・知的財産活動に係る成果事例について、以下の分類ごとに選定し紹介しています。
  分類A: 特許のロイヤリティ・ 特許の商品化・寄付講座・ベンチャー設立
  分類B: 地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
  分類C: 大型外部資金
  分類D: 人材育成 

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事例紹介

成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
宮城県山元町磯浜漁港における漂砂対策のための電磁式流速流向計を用いた海底流計測
サブタイトル

氏名
園田 潤
学校名
仙台高等専門学校
所属学科等
知能エレクトロニクス工学科
職名
教授
プロフィール写真
共同研究者

西田信吉・山元町役場・まちづくり整備課

大和郁郎・宮城県漁業協同組合・仙南支所(山元)

千葉元・国立高等専門学校機構・富山高等専門学校

米倉淳・国立研究開発法人科学技術振興機構・JST復興促進センター仙台事務所
本文
1.研究背景
 近年、日本の砂浜の減少が報告されており、国土保全のためには砂の流出をいかに最小化するかが重要な問題である。一方で、流失した砂や河川流に含まれる砂などは漂砂と呼ばれ、例えば漁港などに堆積し、漁船の破損や故障など操業に大きな影響を与えるため、漂砂を取り除く浚渫工事が必要で費用が増大するなどの問題があり、漂砂を適切な場所に誘導し堆積させる手法などの開発が必要とされている。
 例えば、宮城県山元町磯浜漁港は、漂砂の流入を防ぐ突堤建設などが昭和28年から平成19年まで幾度となく実施されてきたが、現在もまだ年間50cm程度の漂砂堆積が問題になっている。原因として、これまで漂砂対策で用いられてきた3次元海浜変形モデルでは最大波高を基礎データとして解析する手法であり、海中の流れを組み込んでいなかったことが一因と考えられる。そこで我々は海底流に着目し、磯浜漁港沖の2km×1kmの範囲の海底流を複数台の電磁式流向流速計を用いて測定し、磯浜漁港における海底流と漂砂堆積の傾向との関連性について検討する。


2.電磁式流向流速計による海底部の流向流速測定
 海底流を直接計測する機器として、JST A-STEPハイリスク挑戦タイプ(復興促進)の助成を受け図1に示すような設置治具に固定した電磁式流向流速計を4基用意し、これを平成26年10月から平成27年3月の6ヶ月間に図2のように海底に設置し一定日数測定後に次の測定場所に移動する手法を用いて海底流を測定した。これにより、磯浜漁港の左右および前面およそ1kmの海域の海底流の流向流速を測定し、150mメッシュの海底流マップを作成した。本測定は6ヶ月間という期間で実施したが、各測定点は10、000個程度のデータから統計処理をしている。

図1 設置治具に固定した流向流速計
     図1 設置治具に固定した流向流速計

図2 流向流速計の投入と設置の様子
     図2 流向流速計の投入と設置の様子

 図3に測定した流向流速から統計処理した海底流の流向ベクトル図を示す。一方、図4に磯浜漁港の平成19年度漂砂解析検討で用いられた最大波高の波向ベクトル図を示す。図3、4の結果から、これまでの手法による波向きは上から下であるが、今回の測定結果から流向はおおよそ左上から右下に向いていることが分かる。この結果は実際に漂砂の堆積が多い箇所が漁港の右側であることと一致しており、これまでの表層の波だけでなく海中の海流も考慮した解析が必要であることを示した。
   
  図3 本研究による海底流向ベクトル図    図4 平成19年度の最大波高ベクトル図

3.今後の展開
 これまでに秋から春の期間中の海底流を測定できたが、今後は数年間にわたり測定する必要がある。また、測定方法も、例えば、人工衛星や航空機搭載センサによる上空からのリモートセンシングにより漂砂の挙動を観測する手法なども検討している。さらに、測定で得られた深さ方向の海流を組み込んだ漂砂対策の数値シミュレーション手法を開発する。漂砂は現在実施している山元町磯浜漁港だけでなく、国内外で問題になっているため、他地域にも展開していく予定である。


添付
特許出願番号

意匠登録番号

電話
022-391-5616
E-Mail
sonoda*sendai-nct.ac.jp
ホームページ
http://www.sendai-nct.ac.jp/
掲載年度
2015年度