産学官連携成果

産学官連携成果

 産学官連携・知的財産活動に係る成果事例について、以下の分類ごとに選定し紹介しています。
  分類A: 特許のロイヤリティ・ 特許の商品化・寄付講座・ベンチャー設立
  分類B: 地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
  分類C: 大型外部資金
  分類D: 人材育成 

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事例紹介

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成功事例分類
分類A:特許のロイヤリティ等
タイトル
デジタルデータの情報埋め込み装置及び埋め込み情報検出装置
サブタイトル

氏名
先名健一
学校名
函館工業高等専門学校
所属学科等
情報工学科
職名
教授
プロフィール写真
1-0
共同研究者
本文
1.研究背景と技術内容
 当研究室では数年前から離散コサイン変換を用いて効率よく画像に情報を埋め込む研究をしていました。この分野には多くの先行研究があるため独創的で有用なアイデアを絞り出すのに苦労していましたが、あるときふっと、誤り訂正符号のもつ誤り訂正機能を用いれば面白いことができることに気が付きました。通常、誤り訂正符号は信号などに混入する雑音を取り除くのに使用されますが、そこを敢えて符号化された信号に情報を雑音として埋め込むというものです。その埋め込まれた情報は復号することによって抽出すことができ信号には残さないことも可能です。科学技術振興機構(JST)の特許化支援担当者からは「コロンブスの卵」的な面があるアイデアと評価を頂いています。

企業への移転で困難だったこと
 特許出願の後、CEATEC JAPANや北海道地区高専テクノ・イノベーションフォーラムに出展したり、或いは函館地区の複数の企業に特許技術の説明をしたりしました。その結果、関心は高かったのですが、技術の具体的な供与の話までは発展しませんでした。出願した特許技術は基本特許に属するもので、したがってそれをすぐに活用ができないところに原因があったかと思います。

技術移転に至たるきっかけ
 出願特許とQRコードの相性がいいことは認識していまして、そこでQRコードと関係する企業をインターネットで検索しました。その結果、東京のA・Tコミュニケーションズ(株)という「ロゴQ(デザイン入QRコード)」を販売していてしかも多数の特許を保有し、コンプライアンスもしっかりしているベンチャー企業が目に留まり連絡したところ、大変興味を持ってくれまして譲渡の運びとなりました。現在、その会社では特許技術を用いてセキュアなロゴQを開発しています。

譲渡理由
 特許出願したのが定年退職する1年半前ということで特許審査までの時間的な猶予がありませんでしたので、特許出願した権利を企業に有償譲渡する形態で技術移転することにしました。出願から始めて譲渡まで辿り着けたのも函館高専並びに高専機構の知財関係者やJSTの特許調査員、北大の産学連携アドバイザーの御陰でもあります。



 
情報の埋め込み 埋め込み情報の抽出と複合
添付
特許出願番号
特願2011-196948
意匠登録番号

電話
0138-59-6441
E-Mail
sakina*hakodate-ct.ac.jp
ホームページ
http://www2.hakodate-ct.ac.jp/
掲載年度
2012年度
成功事例分類
分類A:特許のロイヤリティ等
タイトル
水質浄化材(アオコ発生防止材、魚介類繁殖材、鉄分供給材)
サブタイトル

氏名
小島 昭
学校名
群馬工業高等専門学校
所属学科等
物質工学科
職名
特命教授
プロフィール写真
2-0
共同研究者
本文
1.技術概要
 開発技術は、炭素材と鉄材とから構成される水質浄化材であります。炭素材と鉄材を接触させることで、水中に鉄が溶解します。薬剤も、エネルギーも不要、持続的に鉄分を水中に供給する環境にやさしい鉄分供給材であります。
 溶解した鉄の作用によって、水中のリン濃度は低下し、湖沼の水面が緑色になるアオコや、真っ赤になるアカシオの発生を防止します。ゴルフ場池、公園池、河川水の浄化に展開中です。海水中では、溶解した鉄の作用によって、藻場を再生し、魚介類を集め海の釣り堀をつくります。さらに、炭素材には魚介類が産卵し、海洋牧場を構築します。

2.開発経緯
 本技術は、JSTの群馬県域結集型研究開発プログラムで、石井商事㈱(高崎市)と共同開発しました。開発した商品は、陸水用には「すーぱーぴーとる」(図1)、海水用には「ミスタースチールカーボーン」(図2)であります。2012年10月から岩手県山田湾で牡蠣養殖技術の開発に着手しました。牡蠣の成長促進材、着卵材で大津波被災地の復興促進に貢献中であります。多数の特許を出願、特許登録済。世界の水を本技術で再生するべくPCT出願済みです。
技術開発・技術移転のポイントは、パートナー企業の「こころ」と「まこと」であります。

3.開発商品
①環境水(アオコ、アカシオ発生抑止材、水草発生防止材,水質浄化材)、②水槽(養魚槽、高架水槽、水輸送容器、水保管容器、緊急時対策用水貯留容器、学校プール、防火用水槽、ビル地下水槽、雨水貯留水槽(離島、山小屋)、③輸送容器(タンカー、タンクローリー、活魚用水槽)、④海域(藻場再生材、着卵材、魚介類蝟集材)、⑤土木(ケーソン、浮き桟橋、浮き魚礁)、⑥畜産排水浄化装置(脱色、脱リン、脱COD)

4.今後の展望
 水の惑星「地球」の水が、汚染汚濁され窒息状態となっています。鉄と炭のコラボレーションで地球水を再生し、世界の海を豊潤の海にします。




アオコ発生防止材「すーぱーぴーとる」
 
鉄分供給材「ミスタースチールカーボーン」の商品カタログ
添付
特許出願番号
特許4917655, 特許4882038, 特許4572302, 特許4556038, 第4413879, 2010-173747, PCT/JP2009/065109, 2010-128997
意匠登録番号

電話
027-254-9217
E-Mail

ホームページ
http://www.chem.gunma-ct.ac.jp/inorg/kojima/
掲載年度
2012年度
成功事例分類
分類A:特許のロイヤリティ等
タイトル
移動体形状の体系的な最適設計
サブタイトル

氏名
遠藤 真
学校名
富山高等専門学校
所属学科等
商船学科
職名
教授
プロフィール写真
3-0
共同研究者
本文
1.研究の背景
 富山高等専門学校・商船学科は、学科名が示すように、海と船に関する実験・解析技術が蓄積されています。特に、水表面や流体中の移動体等の設計・解析手法については、写真1に示すように、充実した体系的な最適化プロセスが構築・運用されており、学術的な研究のみならず、技術支援などの学外の要求にも継続的に応えています。

2.釣具開発への適用
 釣具メーカーの技術相談に端を発し、水表面や流体中の移動体に関する体系的な最適設計手法を釣具開発に適用し、現在までに、二種の新しい釣具の開発に成功しました。ひとつが鮎釣り用低抵抗「友船」であり、他のひとつは脱鉛化高性能「釣用錘」であります。

(1)鮎釣り用低抵抗「友船」の開発
 「友船」とは鮎の友釣りにおいて「おとり鮎」を入れておく舟形の生簀であり、釣人が腰から紐で川に流して使用するものであります。従来の友船は川の流れから受ける抵抗が大きく、釣人の動きを妨げたり、疲労増につながるなどの問題を発生し、抵抗の少ない友船が企画され、開発における技術支援を行いました。市販されている全種友船の抵抗試験、試設計、試作友船の抵抗試験と解析、フィールドテストによる検証など、1年半におよぶ研究・開発を経て、写真2に示すように、従来品よりも抵抗が3割少ない友船の開発に成功し、製品化されました。

(2)脱鉛化高性能「釣用錘」の開発
 一般的な釣用錘の材質は鉛であり、他産業と同様に脱鉛化が命題となっており、従来品よりも落下速度の高い脱鉛化錘が企画され、開発を担いました。錘の落下速度計測法の開発、市販錘の落下速度計測、試設計、試作鋼製錘の落下速度計測とCFD解析など、1年間の研究・開発を経て、写真3に示すように、落下性能の高い鋼製錘のプロトタイプの開発に成功しました。意匠登録を行い、特許を取得し、専用実施権契約を結んだグローブライド株式会社から製品として販売されました。

3.今後に向けて
 我々の暮らしは大気・水などの流体に囲まれ、暮らしを支える物品は流体の圧力を受け、抵抗・揚力などの力を利用、活用して成り立っています。水表面や流体中の移動体に関する体系的な最適設計手法を適用する分野は広く、多い。新たなる手法の開発、精度の向上とともに、適用例の拡大を目指しています。




水表面・流体中移動体の最適化プロセス
 
抵抗の少ない"友船"を新開発


抵抗の少ない"友船"を新開発
 
添付
特許出願番号
特許第4568844号
意匠登録番号
登録第1314403号
電話
0766-86-5224
E-Mail
endo*nc-toyama.ac.jp
ホームページ
http://www.nc-toyama.ac.jp/
掲載年度
2012年度
成功事例分類
分類A:特許のロイヤリティ等
タイトル
画像処理技術とロボット技術を活用した医療用安全安心システム
サブタイトル

氏名
久池井 茂
学校名
北九州工業高等専門学校
所属学科等
制御情報工学科
職名
准教授
プロフィール写真
4-0
共同研究者
本文
1.技術内容
 北九州工業高等専門学校では,株式会社セントラルユニと共同で,注射薬の自動仕分けロボットシステムや返品薬仕分け装置を開発し,注射薬自動払出装置(AAD?VIRD)を国内大規模病院に販売しました。本装置は,ロボットによる自動仕分けとカメラ認識による完全な自動処理システムを特徴とし,医療従事者の負担軽減と注射薬のトレーサビリティを実現しています。

2.技術的優位性
 システムを実現するコア技術として,独自の画像処理技術RIM(Rotational Invariant Matching)を特許登録しています。重心点からの等距離エッジ強度を利用して照合する技術のため,処理時間を短縮できる特徴があります。特許の利用件数に応じた実施料収入を対価としています。

3.事業化戦略
 文部科学省 地域イノベーションクラスタープログラム(グローバル型【第Ⅱ期】)の助成のもとで行われました。研究開発成果を基に,その地域の内外から企業などが参画して事業化を推進することが求められました。産学官連携プロジェクトだったので,新しい製品を先駆けて実用化するために,ニーズとシーズをマッチングさせ目標の成果を達成することを優先してきました。

4.波及効果
 薬剤師の手間が省けるほか,ヒューマンエラーを皆無にできるため,作業の煩わしさから解放されクリエイティブな業務に当てられるようになったと評価を受けています。薬剤師が仕分けにかける時間を服用指導に当てることで,よりレベルの高い医療が実現できるようになっています。

5.今後の展望
 平成24年度までに6機を販売し,これまでの販売実績は約5億3000万円に達しました。今後も,医療現場の作業ミスや危険作業の撲滅等への貢献が期待されています。国際社会の中で,高専(KOSEN)のポテンシャルを高める研究開発,人材育成を目指します。




注射薬自動払出装置AAD-VIRD
 
画像処理による注射薬のピッキング
添付
特許出願番号
特許第4683395号,特許第5105379号,特許第5105380号,特許第5105381号,特許第5197729号
意匠登録番号

電話
093-964-7259
E-Mail
kuchii*kct.ac.jp
ホームページ
http://www.kct.ac.jp
掲載年度
2012年度
成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
害獣罠遠隔監視・操作システム「まる三重ホカクン」の開発と販売
サブタイトル

氏名
江崎 修央
学校名
鳥羽商船高等専門学校
所属学科等
制御情報工学科
職名
准教授
プロフィール写真
seika201311_1_prof
共同研究者

三重県農業研究所

株式会社アイエスイー

本文
1.「まる三重ホカクン」の概要
 「まる三重ホカクン」は、害獣罠の遠隔監視・操作システムとして2012年9月から販売しています。携帯電話のデータ通信網を利用して、捕獲罠の映像を閲覧、罠の作動装置を操作できるため、スマートフォンなどを利用して、どこにいても害獣の監視・捕獲を行うことができます。

2.
開発の経緯

 これまでに罠を利用して害獣を捕獲するためには、赤外線カメラの映像を罠の近くで待機しながら確認し、害獣が罠に入ったタイミングを見計らって装置を作動させる必要がありました。このため、夜中に近くのテント等で待機する必要があった他、思い通りの頭数が捕獲できないなどの問題がありました。

 三重県農業研究所より、遠隔地からも映像を閲覧、罠を作動出来ないかという相談を受け、携帯電話網を利用したデータ通信技術を利用してシステム開発を行いました。また、特許出願、システムの広告・販売については伊勢市に本社を持つ株式会社アイエスイーが行うこととなりました。

3.技術的ポイント
 「まる三重ホカクン」は、既存の罠の作動装置をネットワークで動作させるためのI/Oボード、ネットワーク接続可能な赤外線カメラ等を組み合わせて開発を行いました。パソコンはもちろん、スマートフォン等からも罠の監視と装置の作動を行いたいという希望があったため、対応するカメラなどの機器の選定を行いました。

4.今後の展開

 既に商品化し多くの自治体で運用されています。大きなトラブルもなく稼働しており、販売してからの5ヶ月で12機が稼働し、鹿を84頭、猿を116頭捕獲しています。

 今後は、複数の捕獲罠を監視できるような集中管理システムの導入や、罠内の動物数の自動カウントによる記録システム等の導入を検討しています。

添付

「まる三重ホカクン」パンフレット(表)



「まる三重ホカクン」パンフレット(裏)
特許出願番号
特許第153330号
意匠登録番号

電話
0599-25-8081
E-Mail
ezaki*toba-cmt.ac.jp
ホームページ
(研究室) http://www.toba-cmt.ac.jp/~ezaki/ (まる三重ホカクン) http://www.ise-hp.com/hokakun.html
掲載年度
2013年度
成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
超食感「もちもちまぐろ」の開発と商品化
サブタイトル
-南紀勝浦からマグロ革命-
氏名
藤本 晶
学校名
和歌山工業高等専門学校
所属学科等
電気情報工学科
職名
教授
プロフィール写真
seika201403_1_prof
共同研究者
木下 勝之(木下水産物株式会社)
本文
1.研究背景
 和歌山県の那智勝浦は、生マグロ水揚げ日本一を誇っています。ここで水揚げされるマグロの70%を占めるビンチョウマグロは淡泊な味で好まれますが、他のマグロに比べて比較的安価で取引されており、新たな価値を付与して商品価値を高めたいという強い要求がありました。

2.もちもちまぐろの開発
 このビンチョウマグロに新たに「もちもち感」を与えて、これまでに無い新たな食感のマグロを創り出し、和歌山の新たな特産品にするのがこの研究の目的です。従来から魚肉に含まれる水分(ドリップと称する)を減少させることで、歯応えが増すことが知られていましたが、これをマグロ肉に応用するために、種々の脱水方法を試み、独自の脱水処理技術により、マグロ肉のドリップを効果的に減少させることに成功しました。
 図1は、見出した方法でドリップを減少させた際の処理時間と、肉のもちもち感の感性評価値との関係を示したものです。この図より、処理時間によってマグロ肉のもちもち感が変化しており、処理時間を選ぶことにより種々のもちもち感を持つマグロ肉を提供できることが判ります。
 もちもちまぐろの脱水技術の目処が立ったことから、商標登録と特許出願を終えた平成25年12月10日に、那智勝浦町の南紀くろしお商工会を会場に「もちもちまぐろ」の技術発表会と試食会を開催し、報道陣にこの技術を公開して好評を博しました。発表会の様子はNHKやテレビ和歌山、そして地元紙面で大きく取り上げられました。

3.商品化に向けて
 その後、生産性および作業性の向上を目指して種々試行錯誤を続けた結果、平成25年末に商品化の目処をたてることができました。商品化に向けてロゴマーク、パッケージの選定が終わった平成26年2月25日に、前回と同じく南紀くろしお商工会を会場に「もちもちまぐろ」の商品発表会と試食会を開催しました。発表に際してのキャッチコピーは「南紀勝浦からマグロ革命!! 超食感『もちもちまぐろ』」としました。
 この発表会でも朝日新聞、読売新聞、中日新聞、それに熊野新聞、紀南新聞、紀伊民報の地元各紙に取材いただき、新聞紙面で大きく報道されました。またテレビでもNHKのニュースや「あすの和」の番組で、民放では毎日放送の番組「朝ズバ」、および讀賣テレビの番組「朝生ワイド す・またん!」+「ZIP!」でも紹介いただきました。

4.市販と今後の展開
 当面は飲食店等の業者向けに販売を行い、平成26年3月中旬より大手スーパーへの納入が始まります。個人向けには、木下水産物の店頭での個人向けのモニター販売を予定しています。新聞、テレビで大きく取り上げられたこともあり、現在までに多くの引き合いをいただいています。私共の開発した「もちもちまぐろ」が和歌山県の新たな特産品になることを期待します。
 なお、この研究開発に当たっては、全国商工会連合会のご支援をいただきました。関係各位にこの場を借りて感謝の意を表します。
添付
図1 もちもち感の処理時間による変化


写真1 もちもちまぐろを用いた調理例
特許出願番号
「魚肉の処理方法」特願2013-241289
意匠登録番号
「もちもちまぐろ」 第5635643号
電話
0738-29-8373
E-Mail
fujimoto@wakayama-nct.ac.jp
ホームページ
http://www.wakayama-nct.ac.jp/
掲載年度
2013年度
成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
宮城県山元町磯浜漁港における漂砂対策のための電磁式流速流向計を用いた海底流計測
サブタイトル

氏名
園田 潤
学校名
仙台高等専門学校
所属学科等
知能エレクトロニクス工学科
職名
教授
プロフィール写真
sonoda_9313320
共同研究者

西田信吉・山元町役場・まちづくり整備課

大和郁郎・宮城県漁業協同組合・仙南支所(山元)

千葉元・国立高等専門学校機構・富山高等専門学校

米倉淳・国立研究開発法人科学技術振興機構・JST復興促進センター仙台事務所
本文
1.研究背景
 近年、日本の砂浜の減少が報告されており、国土保全のためには砂の流出をいかに最小化するかが重要な問題である。一方で、流失した砂や河川流に含まれる砂などは漂砂と呼ばれ、例えば漁港などに堆積し、漁船の破損や故障など操業に大きな影響を与えるため、漂砂を取り除く浚渫工事が必要で費用が増大するなどの問題があり、漂砂を適切な場所に誘導し堆積させる手法などの開発が必要とされている。
 例えば、宮城県山元町磯浜漁港は、漂砂の流入を防ぐ突堤建設などが昭和28年から平成19年まで幾度となく実施されてきたが、現在もまだ年間50cm程度の漂砂堆積が問題になっている。原因として、これまで漂砂対策で用いられてきた3次元海浜変形モデルでは最大波高を基礎データとして解析する手法であり、海中の流れを組み込んでいなかったことが一因と考えられる。そこで我々は海底流に着目し、磯浜漁港沖の2km×1kmの範囲の海底流を複数台の電磁式流向流速計を用いて測定し、磯浜漁港における海底流と漂砂堆積の傾向との関連性について検討する。


2.電磁式流向流速計による海底部の流向流速測定
 海底流を直接計測する機器として、JST A-STEPハイリスク挑戦タイプ(復興促進)の助成を受け図1に示すような設置治具に固定した電磁式流向流速計を4基用意し、これを平成26年10月から平成27年3月の6ヶ月間に図2のように海底に設置し一定日数測定後に次の測定場所に移動する手法を用いて海底流を測定した。これにより、磯浜漁港の左右および前面およそ1kmの海域の海底流の流向流速を測定し、150mメッシュの海底流マップを作成した。本測定は6ヶ月間という期間で実施したが、各測定点は10、000個程度のデータから統計処理をしている。

図1 設置治具に固定した流向流速計
     図1 設置治具に固定した流向流速計

図2 流向流速計の投入と設置の様子
     図2 流向流速計の投入と設置の様子

 図3に測定した流向流速から統計処理した海底流の流向ベクトル図を示す。一方、図4に磯浜漁港の平成19年度漂砂解析検討で用いられた最大波高の波向ベクトル図を示す。図3、4の結果から、これまでの手法による波向きは上から下であるが、今回の測定結果から流向はおおよそ左上から右下に向いていることが分かる。この結果は実際に漂砂の堆積が多い箇所が漁港の右側であることと一致しており、これまでの表層の波だけでなく海中の海流も考慮した解析が必要であることを示した。
   
  図3 本研究による海底流向ベクトル図    図4 平成19年度の最大波高ベクトル図

3.今後の展開
 これまでに秋から春の期間中の海底流を測定できたが、今後は数年間にわたり測定する必要がある。また、測定方法も、例えば、人工衛星や航空機搭載センサによる上空からのリモートセンシングにより漂砂の挙動を観測する手法なども検討している。さらに、測定で得られた深さ方向の海流を組み込んだ漂砂対策の数値シミュレーション手法を開発する。漂砂は現在実施している山元町磯浜漁港だけでなく、国内外で問題になっているため、他地域にも展開していく予定である。


添付
特許出願番号

意匠登録番号

電話
022-391-5616
E-Mail
sonoda*sendai-nct.ac.jp
ホームページ
http://www.sendai-nct.ac.jp/
掲載年度
2015年度
成功事例分類
分類C:大型外部資金
タイトル
高専版 ICT農業 活用・普及プロジェクト
サブタイトル
ICT技術で農業の未来を拓く!
氏名
神田 和也
学校名
鶴岡工業高等専門学校
所属学科等
創造工学科 電気・電子コース
職名
教授
プロフィール写真
神田先生 顔写真
共同研究者
千葉慎二(仙台高専)、白石和章(鳥羽商船)、村上幸一(香川高専)、吉田晋(阿南高専)
本文
1.研究背景
 日本の農業を取り巻く環境は、高齢化が進み、後継者不足で厳しいと言われているが、中小規模程度の農家にICT化を図ることで、効率化・高品質化が進み発展の可能性は大きい。農業は極めて融合複合的で、情報通信、電気電子、センシング、ウェブサーバ、土壌、メカトロニクス、画像処理など多岐にわたっている。
 高専の「ものづくり力」、スケールメリット、ネットワーク力により、解決することが期待されている。

(1)異分野融合共同研究事業・補完研究に採択
 鶴岡高専、仙台高専、鳥羽商船、香川高専、阿南高専、合資会社次世代技術でコンソーシアム「全国KOSEN ICT農業研究会」を設立し、名古屋大学、一般社団法人ALFAE、長岡技術科学大学と連携し、農林水産省・農研機構・生研センター「異分野共同研究事業」にて研究課題「情報入力・通信環境機能を備えた低価格センサーシステムの全国圃場への導入と共通データベース・情報共有システムの構築による実証試験」で補完研究事業を遂行している。
 補完研究では、低価格センサーの開発と実証試験がミッションであり、平成26年度~28年度の3 ヵ年で社会実装に向けて普及モデルを構築する予定である。

図1 研究体制

          図1 研究体制図

(2)
高専ネットワークのミッション
 農業ICT化において、生育環境情報、生体生育情報、農作業者情報の収集が必須であり、日本農業の大半を占める中小規模農家に普及するためには、低価格化が重要なポイントとなる。
 そこで、低価格な生育環境情報センサー、生体生育情報センサー、農作業者情報センサーを試作開発し実証試験を実施する。また、データ収集・解析用のクラウドシステムを構築する。以上の項目について、全国規模で実証試験を展開する。
 特に、生育環境情報センサーである「簡易ウェザーステーション」は、必要性が高く、2万円台の価格帯を目指し、センサ-部、通信部、電源部を役割分担し、開発を進めている、さらに、検定付気象観測装置等と併設しトレーサビリティしながら全国15以上の圃場で実証試験を実施している。

図2 研究内容ポンチ絵

          図2 研究内容

2.
今後の展開
 全国レベルの大規模実証試験を行われた例はなく、新規性・先導性・優位性を有する。本プロジェクトが成功すれば、事業化へ発展する可能性を判断できる。
 農業ICTの普及は国家戦略の一つであり、地方においても、高齢化・就農対策の切り札として期待されており、行政施策とも整合性がとれている。
 そのため、コンソーシアム構成機関である5高専を含め、20高専にネットワークを拡充する予定である。

添付
特許出願番号

意匠登録番号

電話
0235-25-9095
E-Mail
kanda*tsuruoka-nct.ac.jp
ホームページ
http://ict-agri-nit.jp/    http://interactjp.org/
掲載年度
2015年度
成功事例分類
分類C:大型外部資金
タイトル
スマートデバイス・ロボティクス融合クラスター
サブタイトル
医療現場の安全化と効率化を図る院内業務自動化装置の開発
氏名
久池井 茂
学校名
北九州工業高等専門学校
所属学科等
生産デザイン工学科 知能ロボットシステムコース
職名
教授
プロフィール写真
201310_16_prof 久池井先生
共同研究者

大隈 恵治,守田 雄二(オオクマ電子株式会社)

杉町 圭蔵,末廣 剛敏(遠賀中間医師会おんが病院)
本文
1.研究背景
 病院内の様々な作業現場では、多品種な医薬品(薬品アンプル、医療器具等)が混在した状態で払い出されることが多く、被曝対象品等を取り扱う危険な作業現場においても、払い出し作業は人間が関与しているのが現状です。また、手術では大量の薬を使いますが、保険請求に必要な書類を手作業で記録するため看護師の負担となっています。

2.新規性
 北九州高専・オオクマ電子株式会社・遠賀中間医師会おんが病院は、従来ゴミとされていた使用済み注射薬を情報のリサイクル品として活用する「注射薬自動読取装置」を開発しました。ドクター・看護師・薬剤師・医事課と連携し原価計算・請求漏れを防ぐことができ、病院の経営改革と相反するリスクマネージメントが同時にできる世界初のシステムです。

3.優位性
 ピッキングと物体認識のプロセスを同時に実現できます。物体を回転させる工程を必要としないため、高精度で処理時間を短縮することが可能となり、透明容器の認識にも成功しました。同時に、小型化(体積比30%削減)も実現しました。装置を導入後、残業時間が60%削減、記録ミスはゼロ、手術の回転率が3割アップしたと報告されています。

4.今後の展開
 オオクマ電子㈱から製品化された「使用済注射薬自動認識システム(SPASER)」の海外展開が進んでおり、2013 年にデンマーク政府によるスーパーホスピタル構想に採択され、米国では2015 年からUCSD(University of California、 San Diego)メディカルセンターでトライアル開始予定です。既に海外展開を進めている従来の装置(SPASER)の販売戦略に基づき、高速・高精度・小型化を実現した本システムを米国・欧州を中心に展開します。

図1 高速化・高精度化・小型化に成功
     図1 高速化・高精度化・小型化に成功


図2 識別情報を記録・管理するソフト
        図2 識別情報を記録・管理するソフト


添付
特許出願番号

意匠登録番号

電話
093-964-7259
E-Mail
kuchii*kct.ac.jp
ホームページ
http://w3-cise.kct.ac.jp/kuchii/
掲載年度
2015年度
成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
水を抜かずに底泥を浚渫する生態系保全型底泥資源化工法の開発・実用化
サブタイトル

氏名
青井 透
学校名
群馬工業高等専門学校
所属学科等
環境都市工学科
職名
特命教授
プロフィール写真
青井写真小
共同研究者
本文
1.研究背景
 群馬高専内にある農業用ため池は、平成6年の赴任時には水を抜いて行った浚渫改修直後のため清澄でしたが、上流域の市街化進展により降雨に伴うゴミ・ヘドロ・砂泥の流入が激しく、急激な環境劣化が発生しました。そこで水を抜かない底泥除去方法を探しましたが、どこにもないことが分かり、学生達と長い時間をかけて独自に挑戦を続けました。その結果、実習工場で特殊な撹拌羽を試作頂き市販の水中汚物ポンプと組み合わせることにより、堆積ヘドロを撹拌し陸上に輸送するポンプが完成し活用出来ることが分かりました。それ以降、産学官連携により実規模で27件の実績を挙げています。

2.技術の概要
 人が乗れる小型台船に浚渫ポンプを懸垂して堆積ヘドロを撹拌後、100mのホースにより陸上の分離脱水装置に送液して、洗い砂・スクリーンゴミ・脱水土として回収し、上澄水は池に戻します。砂・ゴミ分離後の粘土シルトは、無機中性凝集剤で大きな粒子となり沈降分離後脱水機で脱水されフレーク状の脱水土になります。この脱水土は良質の培養土であり植物栽培に利用することができます。ゴミのみが廃棄物となり洗い砂は利用できます(図1を参照)。

図1 底泥資源化工法システムフロー
      図1 底泥資源化工法システムフロー


3.技術の特徴
・水を抜かないので何時でも施工可能
・生き物は逃げるため生態系は保全される
・スクリーンゴミ以外は資源として利用可能
・脱水土は栄養に冨み保水性が良いので培養土で利用できる
・設備はコンパクト、騒音臭気が発生しないので観光地でも適用できる(写真)

写真1 13年夏に浚渫した国宝松本城  写真2 松本城浚渫時の台船及び設備
写真1 13年夏に浚渫した国宝松本城   写真2 松本城浚渫時の台船及び設備


3.今後の展開
 これまでは公園景勝地等で採用されていますが、福島県内のセシウム汚染された農業用ため池で濃度が高い粘土シルトのみを選択的に回収して安定保管する技術も実証が済み、まもなく実用化される予定で。また、シジミが取れる汽水湖でヘドロ除去のニーズがあり適用を検討しています。分離底泥を一度河川水など淡水で洗浄することにより資源化が可能なので、適用範囲拡大に注力する予定です。


添付
特許出願番号
特願2005-340215
意匠登録番号

電話
027-254-9271
E-Mail
aoi*cvl.gunma-ct.ac.jp
ホームページ
http://www.gunma-ct.ac.jp/
掲載年度
2015年度