産学官連携成果

産学官連携成果

 産学官連携・知的財産活動に係る成果事例について、以下の分類ごとに選定し紹介しています。
  分類A: 特許のロイヤリティ・ 特許の商品化・寄付講座・ベンチャー設立
  分類B: 地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
  分類C: 大型外部資金
  分類D: 人材育成 

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事例紹介

成功事例分類
分類B:地域活性化、町おこし・地域資源活用・産業拠点形成
タイトル
高品位分光イメージングを実現可能とする液晶波長可変フィルタ設計・作製方法確立と世界初の宇宙空間実用化
サブタイトル

氏名
若生 一広
学校名
仙台高等専門学校
所属学科等
電気システム工学科
職名
准教授
プロフィール写真
共同研究者
高橋 幸弘(国立大学法人 北海道大学大学院 理学研究院)
栗原 純一(国立大学法人 北海道大学大学院 理学研究院)
武山 芸英(株式会社ジェネシア)

本文
1.研究背景
  近年、「分光イメージング」(測定対象物において、目視では認識が不可能か、あるいは極めて困難な情報を、多数の波長に分光された画像情報を収録・解析することにより高精度に取得する技術)が多くの分野で注目を集めており、多波長に分光された画像情報を高精度かつ高速に取得するための、小型、簡便、高品位な分光イメージング用波長可変フィルタの実現が日本のみならず各国で強く要求されている。この波長可変フィルタは従来多くの方式が提案されているが、波長精度、選択波長範囲、波長可変速度、小型軽量化等において要求性能を満足することが困難な状況が続いていた。
 本成果では、要求性能を満足する最も有力な方法であると期待されながらも、設計指針が確立されていないため限定的な性能に留まっていた液晶を用いた波長可変フィルタ(LCTF)について、設計指針、作製手法を確立し、用途・目的に応じて最適化された、信頼性の高い液晶波長可変フィルタを短時間で設計・製作可能な基盤技術を確立した。これにより、厳しい性能、信頼性、小型軽量化が要求される人工衛星への搭載、運用を世界で初めて実現した。

2.世界初となる超小型人工衛星搭載、世界最高解像度での分光イメージング地球観測実現
 液晶波長可変フィルタによる分光イメージングの概念を図1に、設計、作製した液晶波長可変フィルタ光学部の写真を図2に示す。
 本成果にて実現した液晶波長可変フィルタは小型軽量である(例:超小型人工衛星用光学部3cm立方、約80g)と同時に、画像情報を保持しながら電気的な制御で任意の波長を短時間で選択でき、飛躍的な解析精度の向上が可能である。実用化事例について、本成果による液晶波長可変フィルタが世界で初めて超小型人工衛星(「雷神2」)に搭載され、2014年5月に打ち上げ成功した。本フィルタによる分光イメージングでの地球観測解像度は世界一を誇る(2016年1月現在)。これにより、森林の植生分布、地球上の地質・水質解析、天候解析等について、これまで得られなかった情報が液晶波長可変フィルタにより詳細に取得可能となった。
 また、2016年には液晶波長可変フィルタを搭載した2機目の超小型人工衛星がフィリピン第一号の人工衛星として日本で開発完了しており、フィリピン政府に引き渡され、国際宇宙ステーションより放出、運用される予定である。打ち上げ前に厳密な性能試験、信頼性試験をクリアしており、厳しい使用環境に対する信頼性も保証される。

  図1 LCTFによる分光イメージング
         図1 LCTFによる分光イメージング
           
  図2 設計、作製したLCTF
         図2 設計、作製したLCTF


3.今後の展開
  本成果は「分光イメージング」の本格展開・普及に対して中核的な役割を果たす素子として、宇宙用途のみならず、多岐にわたる応用と多大な貢献が期待できる。現在も医療分野、工業分野、食品分野、農林水産分野など多分野からのニーズを受け、各用途で要求される特性項目について企業等と協議を進めている。これまで得ることが極めて困難であった情報を簡便かつ容易に取得可能とすることから、本成果が各分野にもたらす波及効果は極めて高いと考える。

添付
特許出願番号
「顕微鏡装置」  (特願2010-51282, 特開2011-186182)               「波長可変フィルタ分光装置」 (特願2007-51804, 特開2008-216479)         「液晶波長可変フィルタ」  (特願2007-34493, 特開2008-197518)
意匠登録番号

電話
022-381-0305
E-Mail
wako*sendai-nct.ac.jp
ホームページ
http://www.sendai-nct.ac.jp/
掲載年度
2015年度